健康経営や福利厚生の文脈で、「食」をテーマにした取り組みへの関心が高まっています。一方で、栄養セミナーや資料配布といった知識提供型の施策だけでは、なかなか行動の変化につながらないという声も少なくありません。
そこで注目されているのが、体験を通じて気づきを促す「大人の食育ワークショップ」です。知識を一方的に伝えるのではなく、実際に見て、触れて、考えることで、食生活を自分ごととして捉えるきっかけをつくります。
なぜ今、企業に「食育ワークショップ」なのか
食は、年齢や性別、職種を問わず、すべての社員に関わるテーマです。毎日の選択の積み重ねが健康状態に影響するため、健康経営とも親和性が高く、食育やSDGsの文脈とも自然につながります。また、食をテーマにしたワークショップは参加の心理的ハードルが低く、楽しみながら参加できる点も特徴です。福利厚生施策として実施することで、社員の健康意識を高める「入口」として機能します。
ワークショップ型の食育が選ばれている理由
健康経営や福利厚生の文脈で食育に関心を持つ企業が増える一方で、「セミナー形式では参加が伸びにくい」「知識提供だけで終わってしまう」といった声も多く聞かれます。そうした背景の中で注目されているのが、体験を中心に据えたワークショップ型の食育です。
ワークショップは、聞くだけではなく「触れる・選ぶ・比べる・作る」といった行動を伴うため、参加者自身が主体的に関わりやすい特徴があります。この『主体性』が重要で、結果として、食に対する関心や記憶への残り方が異なり、日常生活への接続が生まれやすい点が評価されています。
福利厚生として導入する際に意識したい視点
ワークショップを福利厚生として実施する場合、重要なのは「学ばせる場」にしすぎないことです。業務や生活の延長線上に置かれると心理的ハードルが上がり、参加率に影響します。そして「楽しい」というのが重要です。
そのため、
・正解の押し付けや強要をしない
・伝えたいことをエンタメ化し、楽しさや発見を重視する
といった設計が、結果的に参加の定着につながります。
食育に関するワークショップは、教育施策というより「体験型コミュニケーション」の一環として位置づける方が、企業にも従業員にも受け入れられやすい傾向があります。
オフィスで実施できる体験型食育ワークショップの例
野菜350gを“はかってみる”ワークショップ
健康日本21で示されている野菜摂取の目標量を、実際に量ってみる体験です。数値として知っているつもりでも、実際に手に取ってみると「思っていたより多い」「意外とこれくらいか」といった気づきが生まれます。
このワークショップでは、達成・未達成を評価することが目的ではありません。あくまで、自分の感覚と現実の差を知り、日々の食生活を振り返るきっかけをつくることを大切にしています。

野菜を“食べ比べる”体験企画
同じ野菜でも調理方法や切り方を変えて、食べ比べてみるワークショップも面白いですね。野菜のプロに教えてもらいながら、実際に見て食べ比べることで、野菜の美味しい食べ方を日常に取り入れたいという実感につながります。
この体験を通じて、スーパーや直売所で野菜を選ぶ際の視点が変わり、日常の行動に自然と反映されていきます。
野菜を使ったスムージーづくり体験
数種類の野菜を組み合わせてスムージーをつくる体験は、野菜の取り入れ方の幅を広げます。忙しい朝や間食の代替として活用できるイメージを持ち帰ることができ、「野菜=手間がかかる」という意識を和らげます。

ファミリーデーでの野菜のお買い物体験
ファミリーデーなどの社内イベントでは、野菜マルシェ形式のお買い物体験を取り入れることもできます。買う側・売る側の役割を変えたワークを取り入れても良いでしょう。価格や旬、量を考えながら行う体験は、家庭での会話にもつながり、食育を次世代へ広げる機会になります。
従業員親子で参加してもらうのならば、野菜の捨ててしまう部分をはんこにする“野菜スタンプ”ワークショップも面白いです。
和食など伝統食文化に触れる体験
味噌作りを代表とする、日本の伝統的な食文化の体験も良いでしょう。調理室があれば本格的な味噌も作れますが、一般の会議室でも、「おから味噌」であれば教室内に水も火も必要ありません。減塩の取り組みと絡めれば、健康づくり施策としても面白い企画になることでしょう。

ハーブを束ねてブーケにしたり、ハーブソルトを作ったり、ドレッシング作りも面白いです。季節感を出してドライフルーツでリースを作るワークショップも楽しいイベントになりそうですね。
食べもの×SDGsを体感するワークショップ
例えば、みかんの皮を使ったサシェづくりや、コーヒーかすや玉ねぎの皮でハンカチを染めるなど、普段食べ物の捨ててしまう部分を使うモノ作り体験も良いですね。SDGs企画にもなります。体験を通じて「もったいない」「余す」という感覚を自分ごととして捉える構成が特徴です。
体験・対話・振り返りを大切にしたワークショップ設計
食育ワークショップの価値は、時間の長さではなく構成にあります。体験を入り口に、参加者同士の対話や振り返りを行うことで、気づきが定着しやすくなります。
ただモノを作って終わるのではなく、同時に生活に役立つ知識も提供し、帰宅後の取り組み方を伝えることも大事です。「参加した」「考えた」という実感を持ち帰れることが、福利厚生施策としての満足度にもつながります。

オンライン開催という選択肢
食育のワークショップはオンラインでも実施できます。拠点が分散している企業や在宅勤務者が多い場合でも参加しやすく、食材を自宅に届けることで生活習慣に直接つながる点が特徴です。
オフィスに集まる集合開催は一体感を生み、オンライン開催は家庭視点を取り込めます。どちらが優れているかではなく、目的や対象に応じて使い分けることが現実的です。
| 観点 | 集合開催 | オンライン開催 |
|---|---|---|
| 一体感 | 高い | 家庭視点が入る |
| 参加対象 | 出社者中心 | 全社員 |
| 行動変化 | 職場内で起きやすい | 生活習慣に直結 |
実施の際に意識したい設計のポイント
正しい情報を伝えつつ行動自体は自身から起こさせる
科学的・公的に正しい情報はきちんと伝えます。例えばお土産に野菜を渡すなどして取り組みやすい環境にし、実行に移す選択は参加者自身に委ねることで、自発的な行動変容につながります。
ワークショップ単体で終わらせない
体験で生まれた気づきを、行動につなげる環境づくりが重要です。野菜に触れた後、無理なく選び続けられる仕組みがあることで、食育は一過性のイベントではなくなります。
福利厚生として説明しやすい形に整える
健康経営や食育、SDGsと自然につながる設計にすることで、社内外への説明や報告もしやすくなります。参加者アンケートも実施することで、継続的な取組として指標を残すことができるでしょう。

ワークショップの設計の仕方
ご自身が管理栄養士やイベント企画に慣れている場合は、ご自身で運営企画してみましょう。その際はこれまで記述してきた内容を押さえて考えることが重要です。もし担当者メンバーで設計が難しい場合は、社外のプロに相談するのも1つの手です。ワークショップは効果が大きい反面、考案や準備に時間がかかるのも事実です。上手に運用を考えていきましょう。
まとめ|体験から始める、実践的な大人の食育になるワークショップ
大人の食育は、大がかりな研修や制度から始める必要はありません。小さな体験が意識を動かし、環境が行動を支えます。福利厚生として無理なく続けられる形で、社員一人ひとりの食生活を見直すきっかけをつくることが、これからの健康施策として求められています。
