企業における「大人の食育」への関心は、健康経営の広がりとともに年々高まっています。一方で、企業担当者からは「何を、いつ実施すればよいのか分からない」「単発で終わらせず、年間でどう組み立てればいいのか悩む」といった声も多く聞かれます。
本記事では、2026年に企業が押さえておきたい食育関連の月間・記念日・制度動向を整理し、“大人の食育”を年間計画に落とし込むための実務的な視点をまとめます。
企業が「大人の食育」に向き合い始めた背景
近年、国の健康政策では、働く世代の食生活に関する課題が繰り返し指摘されています。健康日本21(第三次)では、野菜摂取量の不足、食塩摂取量の多さ、朝食欠食といった傾向が、若年層から中高年層まで広く見られることが示されています。
これらの課題は、将来的な生活習慣病リスクだけでなく、日常的な集中力低下、疲労感、体調不良といった業務パフォーマンスへの影響とも無関係ではありません。そのため、食育は「個人任せの健康意識向上」ではなく、職場という生活環境の中で、自然に意識できるテーマとして捉え直されつつあります。
2026年に押さえておきたい制度と政策の動き
食育実践優良法人認定制度の開始
2025年7月、農林水産省より「食育実践優良法人認定制度」の創設が発表され、同年8月から申請受付が開始されました。
2026年は、
●制度の存在が企業に広く認知される
●自社の取り組みが制度趣旨とどう関係するのかを検討する
といった準備・検討フェーズに位置づけられます。
現時点では、評価基準や認定実績が十分に蓄積されている段階ではなく、健康経営の先進企業が先導を切って大人の食育をスタートし、多くの企業が情報収集し始めている状況といえるでしょう。

健康経営との関係性
健康経営優良法人認定制度では、従業員の生活習慣改善や健康づくりに関する取り組みが、評価項目の一部に含まれています。「食生活の改善」の項目はその中核となるテーマのひとつであり、食育は健康経営施策と切っても切り離せません。
制度的にも、健康経営優良法人への申請がされていないと、食育実践優良法人への申請ができません。食育実践優良法人への申請提出には、健康経営優良法人認定のIDが必要になるからです。食育への取り組みは、健康経営優良法人認定の評価にも大きくかかわることが予想されるため、先進企業では食育も同時進行で進めています。
2026年に活用しやすい食育・健康関連の月間・大会
国・行政が主導する重要な月間・大会
【6月】食育月間(内閣府)
国全体で食育の普及啓発が行われる月。企業施策を打ち出しやすい。
【3月】食育推進全国大会(内閣府)
食育の最新動向や事例が共有される全国規模の大会。
【9月】健康増進月間(厚生労働省)
運動・栄養・休養を含めた健康づくりを考える期間。
【10月】食品ロス削減月間(環境省)
食材の背景や適量消費を考える切り口として活用しやすい。
企業施策に使いやすい「○○の日」一覧
食育・健康と親和性の高い記念日
1月24日〜30日 全国学校給食週間
6月17日 減塩の日
8月31日 野菜の日
10月16日 世界食料デー
これらは、野菜摂取・減塩・食の背景理解といった健康日本21の課題と重なるテーマとして活用しやすい日程です。
食材・食文化を切り口にした記念日
2月3日 節分(豆の日)
3月3日 キウイの日
4月12日 パンの記念日
5月5日 お米の日(毎月5日)
7月7日 カルシウムの日
12月5日 みかんの日
参加のハードルが低く、学びと体験を組み合わせやすいテーマとして企業施策に向いています。

年間計画に落とし込むための考え方
春(4〜6月)|テーマ設定と食育月間の活用
年度初めに課題を整理し、6月の食育月間に合わせて取り組みを実施。
夏(7〜8月)|参加型・体験型の企画
野菜や食材をテーマにした企画は関心を集めやすい時期。
秋(9〜10月)|健康増進・食品ロスとの接続
健康づくりや持続可能性と結びつけて整理。
冬〜年度末(11〜3月)|振り返りと次年度準備
実施内容を振り返り、翌年度計画へつなげる。

年間カレンダーで考えることの実務的なメリット
食育施策を年間カレンダーで整理することには、実務上のメリットがあります。
まず、国が定める月間や記念日を活用することで、「なぜ今この施策を行うのか」という説明がしやすくなります。これは社内稟議や関係部署との調整においても有効です。また、あらかじめ年間の流れを描いておくことで、単発で終わるのではなく、テーマを変えながら継続的に接点を持つ設計が可能になります。
人事・総務担当者が動きやすくなる理由
人事・総務部門にとって、新しい施策を企画する際のハードルのひとつが「前例がないこと」です。食育月間や健康増進月間といった公的な取り組みと連動させることで、施策の位置づけが明確になり、社内説明がしやすくなります。また、年間カレンダーに落とし込むことで、繁忙期を避けた実施や、他の福利厚生施策との調整もしやすくなります。
食育を行う意義の整理と前進
2026年は、「大人の食育」という言葉が一部の専門家や先進企業だけのものではなく、より多くの企業にとって現実的なテーマとして認識され始める年になると考えられます。
食育実践優良法人認定制度の開始を背景に、企業が自社の取り組みを見直す動きは今後も続くでしょう。ただし、何か特別なことをしなければならないわけではありません。まずは、既存の健康施策や福利厚生の中に、食という視点をどう組み込めるかを考えることが第一歩になります。
企業担当者が悩みやすい「健康づくり施策への参加率」
企業で健康イベント取り組もうとした際「参加者が思ったより集まらなかった」という声は少なくありません。その背景には、イベントそのものが悪いのではなく、設計段階でのつまずきがあるケースが多く見られます。
施策設計のやり方と実状
参加率が上がらない原因、また担当者のつまづきとして特に多いのが、「知識提供だけだった」「日常との接点が薄い」「参加しにくい時間設定」といった状況です。単発のセミナーや資料配布だけでは、行動変容までつながりにくいのが現実です。
施策設計の仕方・方法のコツ
ではどうすればよいのでしょうか?初めから大成功ということはなかなか難しいです。まずはミニマムで初めてみて、アンケートをとりながら、実施方法などをブラッシュアップをしていきましょう。
また、多くの従業員は忙しい最中に、さらに勉強を強いられたくはないはずですね。知識を教えて講演するセミナーは、最悪眠くなってしまうことでしょう。ですが、それがゲームだったらどうでしょうか?クイズや遊びのような仕立て方だったらどうでしょうか?伝えたい内容をブレずに『エンタメ化する』ことが重要です。

大人はみな、野菜を摂った方がよいことや、塩分を控えるべきことをすでに理解しています。しかし実際の食生活を見ると、外食や中食に偏ったり、忙しさから朝食を抜いてしまったりと、知識と行動の間には大きな隔たりがあります。このギャップを埋めるためには、正解を教えること以上に、「気づくきっかけ」をつくることが重要になります。
企業における大人の食育は、指導や管理ではなく、従業員自身が楽しみながら主体的に選択できる環境づくりを支える視点が求められます。
まとめ|2026年の大人の食育は「計画すること」から始まる
大人の食育は、短期間で成果が見える施策ではありません。その一方で、年間を通じて無理なく接点をつくることで、従業員の意識や行動に少しずつ変化をもたらす可能性を持っています。
2026年は、制度や月間、記念日といった外部の動きをうまく活用しながら、自社なりのペースで食育を位置づけていくことが重要な年です。「いつ、何をやるか」を整理することが、結果として継続につながり、大人の食育を企業文化の一部として根付かせる第一歩になります。計画したことがすべて実施できなくても、まずは計画を始めることに意義があるのです。
