2025年度から、農林水産省は新たに「食育実践優良法人認定制度」を開始しました。この制度は、これまで経済産業省が推進してきた「健康経営優良法人認定制度」に関連し、企業における食育の取り組みを評価・顕彰するものです。
働く世代を中心に「大人の食育」を広げる取り組みが注目されるなか、本制度は健康経営や福利厚生と密接に関わり、企業価値の向上やSDGsへの貢献にもつながります。
本記事では、食育実践優良法人の顕彰制度概要や評価項目、申請に向けたポイントをわかりやすく解説します。
食育優良法人認定とは
食育優良法人認定は、企業が行う食育推進活動を評価する仕組みです。農林水産省は毎年発行している「食育白書」の中で、子どもだけでなく大人を対象とした「大人の食育」の重要性を強調しています。その具体策の一つが、本制度の創設です。
この顕彰制度の趣旨は次の通りです。
私たち株式会社ヴァカボでも、この制度のスタートを受けてお知らせにて詳しく紹介しています(参考 ≫2025年7月18日お知らせ記事)
制度創設の背景
背景にあるのは、生活習慣病の予防や健康寿命の延伸です。
日本人の野菜摂取量は目標値に届かず、働く世代は特に食生活が乱れやすい状況にあります。そのため「大人の食育」を推進することが、労働力の維持や医療費抑制に直結すると考えられています。
さらに、健康経営優良法人の広がりを受けて、食育分野にも法人認定制度を設けることで、企業の取り組みを一層促進する狙いがあります。また農林水産省では、大人の食育実践事例を広げていきたいという想いもあり、他社へ横展開することで、大人の食育がより一層広がると考えられています。

食育実践優良法人顕彰制度の目的
「食育実践優良法人顕彰制度」は、従業員に対し、健康的な食事の提供等、食生活の改善に向けた取組とその評価を行っている企業を顕彰し、もって企業内の活力向上及び優良な取組の横展開を図ることを目的に創設するものです。(農林水産省発表文引用)
この顕彰制度は、自社の従業員へ対し、「食生活の改善」に資する取組を実施している法人を「食育実践優良法人」として認定するものです。
実施:官民連携食育プラットフォーム(農林水産省創設)
期間:毎年認定
≫ 食育実践優良法人顕彰制度ウェブサイト
≫ 官民連携食育プラットフォーム
評価項目の概要
食育優良法人認定制度では、以下のような事項が重視されるのではないでしょうか。
- 推進体制の整備:経営層が関与する組織的な食育推進体制があるか
- 社員向け施策:野菜摂取の推進、社員食堂や社内販売、ワークショップなど
- 効果測定と改善:アンケートや参加率などのデータを集め、PDCAを回しているか
- 社外への発信:地域や家庭に向けた波及効果、広報での情報発信
これらは単なる福利厚生ではなく、健康経営と同様に経営戦略の一環として実施しているかどうかが評価のポイントになると予測されます。また自社でしかできないものよりも、他社への展開がしやすいものが評価されるのではと考えられています。

申請方法・スケジュールと流れ
※注意※ここに記載するのは2025年9月段階の情報ですので各年毎の最新情報を収集してください。
申請は年1回、公募期間が設けられる予定です。
2025年の申請の流れとしては、申請書(エクセルシート+添付書類)をメール添付で提出 → 審査 → 認定法人の公表、というプロセスになります。
初年度、2025年8月~10月に申請すると、翌年「食育実践優良法人2026」として認定されます。健康経営優良法人認定制度と同様のスケジュール感です。認定法人は認定年度のロゴマークを使用することが出来ます。
【申請期間】2025年8月18日(月)から10月31日(金)まで
【申請方法】上記期間中に農林水産省ウェブサイト内の申請ページより申請
【認定・公表】令和8年度(2026年)春頃を予定
※申請ページのURL等は健康経営の認定に係る申請書及び調査票にも記載される予定
認定取得のメリット
- 社会的信頼の獲得:採用・ブランディングで「健康と食」に取り組む姿勢を示せる
- 健康経営との相乗効果:社員の健康増進が生産性向上につながる
- 福利厚生の充実:社員満足度やエンゲージメントの向上に寄与
- SDGsへの貢献:特に目標3(すべての人に健康と福祉を)、目標12(つくる責任つかう責任)との関連
申請に向けた実践の具体的な施策と事例
企業が取り組む具体的な食育活動の事例としては、農林水産省からは以下のような施策案が挙げられています。
食環境の整備
▼従業員食堂等での食事提供・支援(置き食や弁当も含む)
健康メニューの提供
旬や食文化を意識したメニューの提供
地場産物や有機食材を使用したメニューの提供
健康的なメニューを選ぶ仕組みづくり
職場での野菜販売や社員への野菜配布
▼朝食の欠食対策
朝食の提供(有償の場合を含む)
栄養バランスの取れた朝食レシピの提供
▼食堂以外での食事提供・支援
出先でのヘルシーメニューの提案やお店の紹介
外勤やテレワーク等で職場外に居る従業員への健康的な食事の提供・支援
食リテラシーの向上
▼専門家等による情報提供
保健師や管理栄養士等による食事相談・指導の実施
減塩対策やメタボ予防等に役立つ食情報の提供
▼デジタルの活用
アプリ等を利用した食事量や摂取栄養量の把握
性別や年齢を考慮した必要栄養量の情報提供
食に関するオンライン等での社内コミュニケーションの実施(例:イントラネットの活用、オンライン料理教室等)
▼食情報の発信
健全な食生活につながる定期的な情報提供
旬の食材や地場産物を使用したメニュー等に関する情報提供
家庭でも実践しやすいレシピの提供
体験活動
▼食体験の提供
研修や福利厚生等を通じた農林業体験機会の提供とその生産者との交流機会の提供
旬の食材や地産地消につながる農林水産物の購入機会の提供
食に関するレクリエーションの実施(例:恵方巻等の行事食を従業員とつくることをイベント化し実施する等)

申請に向けた実践のポイント
大人の食育の取り組みは、単発ではなく、社員の食習慣に継続的に働きかけ、企業文化として「大人の食育」を根付かせるための“仕組み”として創っていくのがポイントです。
ただし、食堂がない企業が、食堂を作ってヘルシーメニューを提供しようというのは大変です。いきなり大規模に施策を進める必要はなく、まずは少しづつ出来る事から始めてみましょう。前項の認定制度の取り組み事例を参考に、少しづつ出来る事をやってみましょう。社内の人的リソースだけでは難しい場合は、社外の食育サービスを行っている企業に委託するのも手です。食育施策のプロは、実施ノウハウや経験も豊富で月々1万円などの少額でできる場合もあるので、気軽に相談してみるのが良いでしょう。
小さな取り組みを積み重ねることで、認定申請に必要な実績が整います。まずはどんな食育サービスがあるか調べてみることをおすすめします。
まとめ:大人の食育が企業価値を高める
食育優良法人認定制度は、これからの企業活動において重要な位置づけとなる可能性があります。
健康経営と連動しながら「大人の食育」を推進することは、社員の健康寿命を延ばすだけでなく、企業価値の向上にも直結します。
今後は、認定を取得する企業が増えることで、食育活動が浸透していくことが期待されます。
